最短撮影距離を考えてみる
前回と前々会の記事「デジタルカメラのマクロモードとは?」と「Canon PowerShot G11のテレ端マクロ(Richoのカメラと比べてみる)」は、CanonのPowerShot G11とRichoのカメラの比較になっています。
実際、RichoのCX4は魅力的で、PowerShot G11を購入した後も、まだ未練があります。
CX4とG11の選択で迷ったのは、CX4のマクロ撮影機能の評判
Richoのカメラのマクロ撮影は評判がいいです。
始めて使ったデジカメがRichoのCaplio R4でした。あのマクロ撮影に慣れていたので、G11のマクロ撮影はRichoより劣ると感じていました。
その一つが、被写体が遠くにある時にG11では、マクロ撮影モードでは被写体にピントが合わない点でした。しかし、それは前回と前々回の記事の記事を読んでいただければわかるように、それはただ単に、マクロ撮影モードに対する自分の理解不足であっただけで、決してG11の方が劣るわけではありません。
マクロ撮影で重要なのは最短撮影距離
再度、G11とCX4の撮影範囲を比べて見ましょう。
G11は
通常撮影 : 50cm – ∞
マクロ : 1 – 50cm (W)、30 – 50cm (T)
マニュアルフォーカス : 1cm – ∞ (W)、30cm – ∞ (T)
CX4は
通常撮影:約30cm?∞(広角)、約1.5m?∞(望遠)(レンズ先端から)
マクロ撮影:約1cm?∞(広角)、約28cm?∞(望遠)、約1cm?∞(ズームマクロ)(レンズ先端から)
広角側では、どちらのカメラも撮影範囲は1cmから無限遠であるということなので、差はありません。
望遠側では、CX4は28cmまで寄れるけれど、G11では30cmまでしか寄れないので2cmの差があります。
わずか、2cmならば大した差ではないじゃないか
わずか2cmしか差がないのだから、大した違いでは無い。そう思いました。
しかし、良く考えると、CX4のズームは10.7倍光学ズームです。
被写体が大きく撮影(クローズアップ)できるかという点ではどうなのか?
35mm換算での焦点距離を比較してみます。
G11は
28 (W) – 140 (T) mm
CX4は
28(W)?300(T)mm
望遠側の値が2倍以上違います。焦点距離が長くなると、画角が小さくなります。つまり、狭い範囲しか撮影できない。
同じ面積のフィルムに写すのならば、撮影する範囲が狭いほうが大きく映ることになります。
ですから、レンズ先端から距離が同じ30cmで撮影したとしても、最大に望遠にした場合、写真(撮像素子)に写る被写体の大きさは違うってことだと思うのです。
先日、指輪などの小さなものを撮影したのですが、もっと画面いっぱいになるように大きく撮影しようと、ズームは望遠側で被写体に近づくのですが、撮影最短距離を超えてピントが合わないという場面が多々ありました。
大きく撮影したいなら?
ただ単に大きく撮影したいなら、W側(広角側)で1cmまで、近づけるだけ近づいて撮影すればいいじゃないか?
その点では、G11もCX4も、W側(広角側)で1cmまで近づいてもピントが合うし、広角側での画角も同じなので差はないです。(もっとも大きく写せるのが、ワイド端とはかぎらないですが)
G11の場合、W側(28mm)からT側(140mm)へズームしていくと、焦点距離が大きくなれば最短撮影距離も大きくなります。
ですから、近づくことができる被写体であるなら、G11は望遠側での最短撮影距離で撮影するよりも、W側(広角側)で1cmまで近寄るほうが大きな写真(クローズアップした写真)が撮影できます。
望遠ズームで撮影する目的とは
遠くにあって近づくことができない被写体を大きく写す
普通はこれです。この点では、300mmまでズームできるRicho CX4のほうが優れています。
もうひとつの選択肢であったFUJIFILM FinePix F300EXRは24mm?360mmの光学15倍ズームですから、さらに有利。(今気付いたけど、ワイド側は24mmですね)
望遠ズームで撮影する目的はそれだけではない
望遠ズームで撮影する目的は、遠くにある被写体を大きく写すことだけではありません。
望遠側にズームする=焦点距離が長くなる。
- 焦点距離が長くなれば、画角が小さくなる。
- 焦点距離が長くなれば、被写界深度が浅くなる。
このような性質があるので、近くにあるものでも望遠ズームで撮影することがあります。
(どのような効果を狙って?というのは、また今度)
望遠ズームでマクロ撮影をする人は、望遠側での最短撮影距離というのも重要だということが、G11を使ってわかってきました。
先ほどのFUJIFILM FinePix F300EXRは24mm?360mmの光学15倍ズームですが、仕様の撮影可能範囲をみると、「う?ん?」と、また悩んでしまいます。
画面いっぱいにしたいならトリミングすればよい
そのような理由で望遠側でマクロ撮影をすることがあるのですが、指輪のように小さな被写体の場合、G11では望遠側マクロでは画面いっぱいに拡大した写真を撮影することはできません。
しかし、Webで使用する目的ならば、大きめの画素数で撮影し後からトリミングをすれば十分に拡大した写真になります。
厳密に言えば、画角が異なるので多少の違いはありますが、トリミングして被写体を画面いっぱいにしたならば背景もほとんど写っていないので、その違いは微々たるもの。相当のこだわりのある人しか、その違いに気づかないですよ。
カメラの個性
35mm換算の焦点距離と最短撮影距離の数字だけを比較すると、RichoのCX4よりG11のほうが劣っていることになりますが、いろいろと調べていると、この二つのスペックとは引き換えに他の部分を犠牲にしている(トレードオフしている)ということがわかってきました。
トレードオフなしに、すべてのスペックを高くしようとすると、コストがかかり製品の価格が上昇します。
しかし、物理的に同時に実現しえないこともあるようで、ある目的(例えばボケ味とか)をかなえるために、その方法がカメラによって違うところが、そのカメラの個性であり面白いところだなと思いました。
カメラに個性があるから、いろいろ欲しくなるでしょうけどね。
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